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1、「共用部分と構造上一体となった専有部分」とは
マンションは専有部分と共用部分から成り立っています。専有部分についてはその持ち主であるマンション住民が管理し、共用部分については管理組合が管理します。しかしながらマンションの特性から、たとえ専有部分であっても管理組合が管理した方が効率的な場合もあります。それが「専有部分である設備のうち、共用部分と構造上一体となった部分」(マンション標準管理規約第21条第2項、以下規約とする)です。なお専有部分の専用に供される設備のうち、共用部分以外のものも「専有部分」と言います(規約第7条第3項)。
それでは、「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分」の管理について解説してみたいと思います。
 
 
2、「共用部分と構造上一体となった専有部分」の管理
マンション標準管理規約では、壁・天井・床・柱・梁などの躯体部分はすべて共用部分であり、その上塗り部分や内装部分は専有部分としています(規約第7条2項1号「上塗り説」)。従って、躯体部分よりマンション住民の室内側にある設備は専有部分の設備となるのが原則です。以下具体的に解説します。
 
Ⅰ 給水管・ガス管・電気配管
これらの設備には料金メーターが付いているので、料金メーターより室内側はたとえマンション住民の室外であったとしても専有部分の設備と解すべきです。 
料金メーターについては、各マンションの規約により専有部分としているところもあれば、共用部分としているところもあり一概には言えません。この点、戸建て住宅の場合には各料金メーターは事業者の所有物であって住宅の持ち主の所有物ではありません。そこで多くのマンションでは、料金メーターをマンション住民の所有ではなくて共用部分としています。
 
Ⅱ 雑排水管や汚水管(以下、排水管等とする。) 
前述した通り、躯体よりもマンション住民の室内側にある排水管等は専有部分の設備となりますので、排水管等の管理はマンション住民が行う事になります(規約第20条)。もっとも配管そのものは、躯体の内側にある間仕切り壁との間の空間に配置されているのが通常で、日常生活において排水管等が住民の目に触れることはありません。なおマンション標準管理規約では、「排水管等については配管継手・および立管については、専有部分に属さない建物の付属物」であり共用部分としています(規約第8条→別表第2)。
 
【階下の天井裏にある床下の横引き配管】
東京地判平成8年11月26日は、「横引き配管がある空間は、床コンクリートと階下の天井によって完全に遮断されており構造上の独立性はあると言えるが、右空間は排水管のみが設置されている事からすると、階下の区分所有者が利用する事は出来ず利用上の独立性があるとは言えないので、区分所有権の対象となる専有部分と認める事は出来ない。従って右空間は共用部分と認めるのが合理的である。」とした上で、「右排水管は共同性を有するものであり、また階下の区分所有者の好みによって維持管理を行う事は出来ない事から、右排水管は建物全体の付属物というべきであり、区分所有法第2条第4項から除外される専有部分に属する建物の付属物には該当しないとして、共用部分である」としており、至極もっともだと思います。
 
【漏水等の事故】
どこから漏水して一体誰に原因があるのか等特定するのが困難な場合には、「建物の設置又は保存に瑕疵がある事により他人に損害を与えた」事になりますので、「その瑕疵は共用部分の設置又は保存に瑕疵があるものと推定」され、管理組合が責任を負う事になります(区分所有法第9条)。
 
Ⅲ 管理 
①給水管②ガス管③電気配管等の配管や配線等の『共用部分と構造上一体となった専有部分』については、これらの管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときには、管理組合が行うことが出来ます(規約第21条2項)。 
つまり専有部分については基本的には各マンション住民が管理をすることになるが、マンション全体の配管や配線の清掃や修繕工事、また交換工事を行う場合には、たとえ専有部分の配管や配線であつたとしても管理組合が行うことが出来ます。 
実際問題として、マンション内の配管や配線は通常新築時から等しく劣化していくものであり、配管や配線の劣化による漏水やガス漏れ、漏電等の事故を防止するために修繕や交換をしようとする場合には、管理組合が共用部分や専有部分を問わず全ての工事を行うことができるようにしておく必要性があります。 
また管理組合が共用部分や専有部分を問わず全ての工事を行うことは、別々に工事を行うよりも費用を安く抑えることができるというメリットもあります。
もっとも①配管等の清掃費用については「共用設備分の保守維持費」として管理費を充当する事が可能であると考えられていますが(規約第27条3号参考)、②配管等の修繕や交換については、専有部分内のものについては各マンション住民が実費に応じて負担すべきであるとしています(規約第21条コメント⑧)。 
そして管理組合が、共用部分と構造上一体となった専有部分の管理を行う際には総会の決議が必要です(規約第48条⑨号)。また管理組合は、管理を行うために必要な範囲において、マンション住民の室内やベランダ等に立入りの請求をする事が出来ます(規約第23条第1項)。