1、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
修繕積立金の試算を行うにあたっては、平成23年4月に国土交通省が作成した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(以下、ガイドラインとする)が参考になります。このガイドラインは、新築マンションの購入予定者向けに、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額を提示するものですが、既存マンションにおいても修繕計画を見直す際には一応の目安となります。また分譲業者から提示された修繕積立金の額が妥当かどうかの判断材料にもなります。以下、本ガイドラインに沿って解説してみたいと思います。
2、修繕積立金の目安
本ガイドラインでは、修繕積立金の目安について、専有床面積当たりの修繕積立金の額の「平均値」が記載されていますが、15階未満のマンションの平均値は建築床面積が小さいほど高くなる傾向にあります。 すなわち、
Ⅰ 建築面積が5,000㎡未満のマンションでは平均1㎡当り毎月218円。
Ⅱ 建築面積が5,000以上10,000㎡未満のマンションでは平均1㎡当り毎月202円。
Ⅲ 建築面積が10,000㎡以上のマンションでは平均1㎡当り毎月178円。
《具体例》
専有部分が25坪のケースで試算すると、1坪は約3.3㎡なので25坪は82.6㎡となります。そうすると
Ⅰの場合には、218円×82.6㎡=18006.8→18,010円/月
Ⅱの場合には、202円×82.6㎡=16685.2→16,690円/月
Ⅲの場合には、178円×82.6㎡=14702.8→14,700円/月
そうすると同じ25坪のマンションであっても5,000㎡未満のマンションと10,000㎡以上のマンションでは毎月約3,300円の差がある事が分かります。そしてガイドラインは、新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額を、毎月均等に積み立てる事とした場合の金額です。そうすると毎月3,300円の差は30年間で換算すると
3,300円 × 12月 × 30年 = 1,188,000円
となりますので約120万の差額が発生する事になります。
また20階以上の、いわゆる超高層マンションの専有床面積当たりの修繕積立金の額の「平均値」は本ガイドラインによると、1㎡当り毎月206円となっています。先程の25坪のマンションの例でいうと206円×82.6㎡=17015.6→17,020円/月となります。
3、機械式駐車場
マンションに機械式駐車場がある場合には、毎月管理組合に納める修繕積立金に機械式駐車場の修繕工事費分を加算して納める事がベストです。なぜなら機械式駐車場の修繕工事費は高額になる事が十分に予想されるので、実際の修繕工事時期に一時金として徴収するよりも効率的だからです。本ガイドラインにおいてもその旨の記載がされています。
一般的には、機械式駐車場の一台あたりの修繕工事費を月額に換算すると、2段昇降式よりも4段昇降横行式の方が高くなる傾向にあります。すなわち
Ⅰ 2段昇降式 → 7,085円/台・月
Ⅱ 4段昇降横行式 → 14,165円/台・月
となります。このように決して安いとはいえない金額を毎月負担していかないと機械式駐車場を維持できないのが現実です。
4、私見
今後50年で日本の人口が約4,000万人減少する事を考えると、既にある機械式駐車場については修繕工事をして維持していくという選択肢の他に、将来的には修繕工事をするのではなく機械式駐車場そのものを撤去するという選択肢も併せて検討をしていくべきだと思います。
またこれから機械式駐車場を設置していくという場合には、以上のような高額な修繕積立金を余分に支払っていかなければいけない事を踏まえて検討をしていく事が大切です。しかも機械式駐車場の耐用年数は15年とされている事から、15年後には機械式駐車場そのものを更新する事になりますので、その際には新たに工事代金が発生する事になります。
従って、可能な限り機械式駐車場に頼らない方法を、管理組合は模索して事が大切だと思います。