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1、「大規模修繕工事」
修繕工事には「大規模修繕工事」と言われるものがあります。そこで、まずはその定義について解説してみたいと思います。結論から言いますと「大規模修繕工事」とは法律上の用語ではなく、したがって法律上の定義はありません。
この点、平成22年改訂の国土交通省による「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」には「計画修繕では、効率的な工事実施のため、複数の部位や工事項目をまとめて実施することが多く、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕等を大規模修繕と呼び、通常は10 年以上の周期で大規模に実施されます。」とあります(第1章1.2⑶)。
そこでこの文章を組み替えると「大規模修繕工事とは、修繕積立金を充当して行う計画修繕工事のうち、効率的な工事実施のために複数の部位や工事項目をまとめて実施し、通常は10 年以上の周期で実施される工事」となります。
そして「通常10 年以上の周期で実施される工事」とは、建物の周囲に仮設足場を設置する工事の事を言います。具体的には、仮設工事の他に外壁塗装・外壁や外壁タイルの修繕・屋根防水・床防水・鉄部塗装等・共用内部の工事をまとめて行う工事です。即ち、これらをまとめて行う工事を「大規模修繕工事」と言います。
一方で、「修繕積立金を充当して行う計画修繕工事のうち、効率的な工事実施のために複数の部位や工事項目をまとめて実施し、通常は10 年以上の周期で実施される工事以外の工事」は「小規模修繕工事」という事になります。 
ちなみに法律上の規定ではありませんが、「大規模修繕工事」の事を規定したものとして「マンション標準管理規約」の第28条「修繕積立金」の第1項1号を上げる事ができます。同条項には「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」工事に掛かる費用の事を「特別の管理」に要する経費としています。
 
 
2、「大規模修繕」
前述したように「大規模修繕工事」とは法律上の用語ではなく、したがって法律上の定義はありません。ただし「大規模修繕」については、建築基準法において「建築物の主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の一種以上について行う過半の修繕、模様替え」と定義されています。例えば6本の柱がある建物であれば、そのうち4本を修繕すれば「大規模修繕」となり、瓦葺の屋根を全面金属版葺きに変更する事は過半の模様替え」としてこちらも「大規模修繕」となります。
従って、マンション標準管理規約における「大規模修繕工事」と建築基準法における「大規模修繕」とでは、その意味するところが異なっていますので注意が必要です。
 
 
3、工事の進め方 
大規模修繕工事に限らず建設工事を発注する場合には「設計管理方式」と「責任施行方式」の2つの方法があります。従ってマンションにおける大規模修繕工事はもちろん、通常の修繕工事においてもこの2つの方法のどちらかで行う事になります。
Ⅰ「設計管理方式」
修繕設計と工事管理を設計事務所に委ねて、工事の施工は建設会社に委ねる方式です。設計と施工が分離しているので、同一基準で適正に施工会社を選定できるというメリットがあります。また工事の厳正なチェックを設計事務所に期待出来るので、管理組合にとっては責任施行方式に比べると安心感が得やすい方式ともいえます。ただし、コスト的には設計事務所と建設会社の2社に発注する事から、責任施行方式に比べて一般的には割高になります。
 
Ⅱ「責任施行方式」
修繕設計・工事施工・工事管理を同一の施工業者に委ねる方式です。設計と施工を分離しない一括依頼方式であり、小規模な修繕工事においては採用される事が多い方式です。設計と施工を分離しないので設計管理方式に比べると工事の厳正なチェックは期待できませんが、その分コスト的には設計管理方式に比べると割安になる事が多いです。 
 
Ⅲ「調査・診断」
大規模修繕工事のような計画修繕工事については、その工事を始めるにあたっては長期修繕計画で設定した時期や内容を目安として、まずは専門家に調査・診断を依頼して、その結果に基づいて進めていく事が必要です。
ただしここでの調査が不十分であったり、また診断が間違っていた場合には、その不十分な調査や間違った診断を前提にして修繕工事をする事になります。しかも一旦工事が始まれば後戻りは出来ないため、この「調査・診断」こそもっとも時間と費用を掛けるべきです。具体的には、最低でも2社、可能であれば3社に調査・依頼をしたうえで修繕工事を検討すべきです。一見するとムダに思えるかもしれませんが、調査や診断を十分に行う事は、例えて言うなら「調査・診断」は建物を建てる場合の「基礎」に当たります。基礎がしっかりしていなければ、どんなに費用を掛けて建物を建てても安心して住む事は出来ません。十分な「調査・診断」をした上で修繕工事をする事が、本当の意味での建物の「維持・保全」に繋がります。管理組合は、十分な調査と診断をした上で「設計管理方式」にするのか、「責任施行方式」にするのかを検討すべきです。
 
Ⅳ 計画から工事完了まで
大規模修繕工事は長期修繕計画を立てて、修繕積立金を準備した上で行うものです。実際の工事はまず①調査・診断をして、次に②修繕設計をし、そして③工事会社の選定した上で工事が始まります。工事が始まった後も④工事の監理が必要です。そうして工事は完了していきます。
 
以上より、管理組合としては計画や資金準備もさることながら実際の工事においても充分な時間をかける事が大切です。私見になりますが、工事の1年目は調査・診断に徹し、2年目は修繕設計と工事会社の選定を同時進行させて、3年目に工事を始めるぐらいの余裕が必要だと思います。キーワードは「ゆっくりと急ぐ」です(笑)。