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一、防災訓練
大きく2種類に分ける事が出来ます。
①「実技訓練」・・・緊急対応の模擬行動
②「図上演習」・・・図上で一定の状況を付与して行う模擬実験(シミュレート)
以下、具体的に解説します。
 
 
二、「実技訓練」
1、非常参集訓練
残念ながら災害は時間を選んでくれません。そこで、自宅から実際に非常参集するする訓練を行う事により、途中の道路の通行可能性や被害状況をイメージする事で、万一の際の参集ルートを考える訓練です。
 
2、消化訓練
消火器を使った初期消火訓練や、可搬ポンプの操作訓練の事を言います。
 
3、救助訓練
模擬的に造られた家屋倒壊現場で、指導員の下、バールやノコギリ、ジヤッキなどを使って生き埋めになった人を救助する訓練です。リアリティを演出するためマネキンを要救助者の代わりに使うと効果的です。
 
4,応急救護(手当)訓練
止血法・心肺蘇生法・骨折固定法・AED(自動体外式除細動装置)の操作・負傷者の搬送などの訓練です。リアリティをもたせるためには、ケガ人にメイキヤップを施したり、泣き叫んだりさせる事が効果的です。また、負傷者の病状に応じて医療対応を選別するトリアージ訓練もあります。
 
5、非常電源切り替え訓練
非常電源を使うには切り替えが必要になる場合があります。そこで実際に日常の電源をストップさせてどのように切り替えるのか、また非常電源対象機器やコンセントなどを確認しておく事が大切です。特に自動放送装置や防災無線などの防災機器の円滑な起動は災害時には絶対に必要なので、これらの機器の電源確保や切り替えは優先的に行う必要があります。
 
6、避難(誘導)訓練
災害時に避難する場合には、家屋やブロック塀の倒壊また落下物や自動販売機の転倒で避難路が塞がれたり、火災や川の氾濫で通行を妨げられる事も想定されます。そこで避難途上でどのような障害があるのかを事前にリサーチした上で、実際に避難ルートを観察しながら歩く訓練を行います。また避難行動要支援者については、車イスの利用可能性や車イスを使えない場合の代替用具(おんぶ用具やリヤカーなど)を予め準備しておく事が大切です。
 
7、徒歩帰宅訓練
災害で交通機関が被害を受けたり道路が使用不可能になった場合に備えて、実際に徒歩で帰宅する訓練です。徒歩帰宅する事で帰宅するタイミング、帰宅ルートの安全性、日頃から準備して置くもの(帰宅ルート地図・運動靴・飲み水等)、家族の安否確認方法などを事前に準備します。
 
8、避難所開設・運営訓練
本来、避難所の開設や運営は自治体の責務です。しかし災害が大きくなればなるほど災害対応に多くの人手がかかるため、自治体が避難所の開設や運営全てを引き受ける事は必然的に出来なくなります。そのため、被災した住民自身が自主的に避難所の開設・運営行う事が必要となります。そこで実際の建物やスペース、設備を見ながら、事前に具体的な対応を決めて置く事が大切です。そして訓練の結果に基づいて、避難所設備の改善や備蓄物資の点検をします。
 
9、情報収集・処理・伝達訓練
パソコンなどの情報機器の操作や、情報収集した内容を指定のフォーマットに記入する訓練です。
 
10、シェイクアウト(一斉地震防災訓練)
地震発生直後の安全確保行動を一斉に行う訓練です。
具体的には、
①ドロップ   → しゃがむ、机の下に潜る
②カバー    → 頭を保護する
③ホールドオン → 持続する
の3つを、日時だけ決めて普段いる場所で行います。多くの人が参加出来るので啓発活動にもなります。
 
 
三、「図上演習」
基本的には、コントローラーによる「災害状況の付与」と「対応の要求や質問」により、プレーヤーによる「対応や質問への回答の検討と決定」を繰り返す事によって行います。この方法は以下に分類する事が出来ます。
1、状況付与の詳細性
自ら災害状況の予測が出来るような能力を養うための演習です。具体的には、企画者(コントローラー)が参加者(プレーヤー)に「地震の発生で大きな揺れを感じた」などの情報を付与して、コントローラーが「どこで、どのような被害が出そうなのか」などの質問をプレーヤーにして、その回答に対してコントローラーがコメントします。
実際に災害が起きると、被災地域では予想外の災害状況が次々と発生し判明していきます。
また自治体などの防災機関に次々と入ってくる被害情報がタイムラグを経て被災地域にも届きます。そこでコントローラーは、災害を時系列に分析して、状況に応じた情報をプレーヤー付与していく事で実災害に近い状況を作る事が出来ます。
 
2、時間的ストレスの有無
実際の災害では時間内に重要な意思決定を行う事が求められます。例えば「避難行動」は限られた時間内に避難するかどうかの判断を迫られます。そこで、実際の災害と同じような時間経過で状況を付与して、時間的ストレスを与えながら、情報収集や伝達、また意思決定を即座にさせる演習を行います。
 
3、状況付与の単独性と連続性
災害は時間の経過とともに変化して行きます。そこでコントローラーの行う状況付与も特定の場面や時間に絞ったり(単独状況付保)幅広く扱ったりしながら(連続的状況付保)、臨機応変に行います。
 
4、状況付保の方法
コントローラーがプレイヤーに状況を付与する方法について、演習毎に変化を付けて行います。最も簡単なのは紙に書いた付与状況票をプレイヤーに手渡す方法です。その他、口頭での伝達や内線電話、無線、ファックス、メールなどを使って付与します。過去の実際の災害を録画した映像を付与して行う事も有効です。
 
5、臨場感確保の手法
実際の災害時には、恐怖や不安に囚われ冷静な判断をする事が困難となります。そこで演習においても、臨場感を持たせる環境を作ります。例えば、地震の音や揺れ、殺到するケガ人、救急車やパトカーの音などを演習に取り入れます。また実際の地図を使う事でリアリティを高める事が出来ます。
 
6、ゲーム的要素の有無
途中でクイズを取り入れたりしながら、ゲーム感覚で楽しく演習する事が大切です。
 
7、演習の実施場所
最も望ましいのは実際に災害が発生した時に使う場所ですが、その場所が確保できない場合には、近くにある似たような場所を探して行います。大切なのは演習を行う事なので、場所についてはそれほど神経質になる必要はありません。
 
次に代表的な図上演習について解説します。
 
Ⅰ 状況自己創出型
①状況予測型
コントローラーが最小限の付与状況(災害発生日時・天候・揺れの強さ等)のみを与えて、プレイヤー自身に被害状況を予測させると同時に、それに基づき自らの対応を決定させる演習です。
この演習の狙いは以下の3つです。
❶適切な災害イメージや応急対策への影響を見抜けたかどうか。
❷実行可能な対策を想定できたかどうか。
❸適切な応急対策(消火、救助、医療救護、避難所開設の指示、応援要請や自衛隊の派遣要請、報道機関への対応、住民への呼びかけ等)を迅速に決定して実行に移せたかどうか。
 
②防災グループワーク
①状況予測型がコントローラーとプレイヤーの1対1で行う演習であるのに対して4~6人のグループに分けて行う状況予測型の演習です。コントローラーは場面毎の議論の結果に対して講評を行う事で演習効果が上がるようにします。
 
③DIG(Disaster Imagination Game)
地図を使い、参加者が議論しながら、災害発生後の地域の被害状況や対応を予想する事により、地域の防災力を高め被害を軽減するために有効な対策を自ら気づくようにする演習方法です。この演習にはつの3段階があります。以下説明します。
《第一段階》
タウンウオッチングにより、災害が発生する危険のある個所や被害を受ける恐れのある建物を確認するとともに、災害時に役立つものや人・組織を確認します。
《第二段階》
被害想定結果やハザードマップを活用して、第一段階で得られた結果を合わせて防災マップを作成します。
《第三段階》
作成した防災マップに基づいて地域の防災力の現状と課題について討論します。
 
Ⅱ 詳細状況付与型 
④図上シミュレーション型
コントローラーがプレーヤーに対して、災害時に実際に起こりうる被害や状況を時間を追って付与し、それに対する対応をプレーヤーが検討し、決定する事により進行させる図上の演習です。実施目的により「問題発見型」と「計画作成型」に分ける事が出来ます。
 
⑤避難所運営ゲーム(HUG)
避難所の開設・運営責任者として、避難者の収容や避難所で発生する様々な事態への対応を短時間で決定する事を学ぶ演習です。本演習により避難所運営マニュアルの有効性を検証する事も出来ます。
 
⑥クロスロード
実際の災害時には、時間的切迫性や資源不足から、トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たない、というジレンマ)の状況に陥る事が多くなります。クロスロードは、そのようなジレンマを疑似体験し理解する事、あるいはジレンマを回避するための方法について考える事を狙いとしています。具体的には、プレイヤーが災害担当者になったと仮定して、付与される様々なトレードオフの状況に対して、「イエス」か「ノー」の判断を瞬時にして行きます。そしてグループの中で多数派か少数派かによって勝ち負けを決めます。これを繰り返し様々な課題に取り組みます。最後にプレイヤー各自が、どうして勝ったのかどうして負けたのを振り返り討論します。ゲーム的要素があるのが特徴です。
 
 
四、防災訓練の有効性評価
実技訓練も図上演習もやりっ放しにしない事が大切です。必ず振り返りや講評などを行い、防災計画やマニュアルの改善に結び付ける事が大切です。具体的には、演習後にプレーヤーによる「自己評価」とコントローラーによる「評価」を出来るだけ演習後に行います。