一、はじめに
他の保険同様、マンション共用部分向けの火災保険も各保険会社によって対象範囲や補償範囲等は異なっています。そこで、ここでは私が代理店をしている保険会社の商品を例に取って解説してみたいと思います。ただしあくまでも一般論として解説しますので、個別の案件については省略させて頂きます。
二、対象範囲
マンションにおいて「2以上の区分所有者がいる建物」で「人の居住用のスペース(専有部分)」があるもののうち以下のものが保険の対象として補償されます。
①マンションの専有部分以外の建物の部分(玄関ホールや室内外の階段等)
②専有部分に属さない建物の付属物(電気設備や給排水設備等)
③規約により共用部分とされた付属の建物(物置や駐車場等)
④区分所有者共有の動産(ロビーのソファー等)
三、補償範囲
1、基本補償
①火災
②落雷
③破裂・爆発
④風災・雹災・雪災
風災には台風の他に竜巻も含まれます。
⑤盗難
動産の盗難はもちろんですが、盗難に際して共用部分(玄関ドア等)が損壊された場合にも補償します。
⑥物体の飛来・落下・衝突・倒壊等
⑦水濡れ
給排水設備の事故による損害を補償します。例えば水道管の破裂や便器の排水管が詰まっ事による溢出、また洗濯機の漏水等です。ただし、破裂した水道管や便器の排水管、また洗濯機等の給排水設備そのものの損害は補償されません。補償されるのは、給排水設備の事故によって生じた床や壁の修理費用です。なお「雨漏れ」による損害は補償されません。給排水設備の事故ではないからです。ちなみに事故の定義は『偶然・外来・突発』です。
⑧暴動等による破壊行為
日本国内においては起こらないような気がしますが・・・。
⑨事故に伴う費用
取りかたずけ費用、失火見舞い費用、水濡れ原因調査費用等の、事故に伴う費用を補償します。
2、特約
❿水災
河川が氾濫して浸水した場合だけでなくがけ崩れによる損害も補償します。なお補償範囲から外す事も可能です。
⓫破損・汚損
不足かつ突発的な事故による損害を補償します。なお⑧の「水濡れ」においては、破裂した水道管や便器の排水管、また洗濯機等の給排水設備そのものの損害は補償されませんが、それが不足かつ突発的な事故である場合には、「破損・汚損」として補償する事が出来ます。従って故障の場合は補償出来ません。
⓬電気的・機械的事故
エレベーターや自動ドア等の機械設備については、ショートなどの電気的・機械的事故は補償対象外ですが、特約をつけて補償していく事が可能です。
⓭施設賠償責任
建物が老朽化して外壁の一部が落下し、第三者にケガをさせてしまった場合等を補償します。具体的には治療代等の費用を補償します。
⓮役員賠償責任
管理組合の役員が、管理規約に規定する業務を行った事が原因で賠償請求された場合の賠償金や弁護士費用、法律相談費用、情報漏洩対応費用等を補償します。
⓯個人賠償責任
区分所有者等が、日常生活において発生させてしまった事故や、専有部分の所有・使用・管理が原因で、第三者に対して法律上の賠償責任を負った場合の賠償金を補償します