一、はじめに
住宅に永く住み続けている間には、建物や機器設備の老朽化はもとより家族構成や居住者の生活様式も変化していきます。一戸建てのように増築する事が難しいマンションにおいては、住戸内の間取り等の変更によりこうした変化に対応する事になります。ただし、居住者時自身の意思でリフォーム出来る範囲は居住者が所有する「専有部分」と言われる住戸内に限られ、管理組合への事前の許可や届け出が必要になるのが一般的です。またマンションにおける専有部分は住戸容積が一定なので、個室数を増減する事で間取りや室面積を変える事になります。さらに「共用部分」と言われるマンションの共有スペースにあるパイプシャフトの位置や排水管の長さ(勾配)が関係してくるので、便所や浴室等の位置が平面上の制約を受けます。そこで当事務所では、マンションリフォームマネジャーとして主にマンションリフォームの企画段階におけるサポートをさせて頂きます。以下具体的にご説明致します。
二、相談業務
居住者がマンションリフォームを思い立った場合、自分なりに調べてある程度のイメージを固めるのが通常です。そこで、そのイメージを具体的に実現していくためのアドバイスやご提案をさせて頂きます。またマンションリフォームの特徴を踏まえて、設計や施工の技術面だけでなく管理組合や近隣とのかかわり合い等のソフト面についてもマンション管理士としてアドバイスをさせて頂きます。
さて相談業務には①企画から設計および工事管理などの全てを委託されるケース、②企画のみを行い設計および工事は施工会社に委ね節目でチェックするケース、の二つのケースがありますが、当事務所では②のケースについてサポートをさせて頂いております。
三、概略調査(下調べ)
マンションリフォームの前提となる条件は、同じ規模で同じ立地条件であったとしても、築年数によって工事のプランや工事方法は一変します。またたとえ築年数が同じだったとしても、そこに住む人の年齢や生活様式によってやはり条件は大きく変わってきます。そこで具体的な相談や工事計画に入る前に、マンションの構造や築年数はもちろんの事、土地柄や中古物件の価値、また過去に大規模修繕工事や住戸の改修が行われたかどうかの確認をする事が必要となります。この確認作業の事を概略調査と言います。
四、ニーズの把握
概略調査を踏まえて、居住者との面談によりどのようなリフォームをしたいのかを明確にしていきます。具体的には「相談カルテ」を使って居住者のニーズを把握していきます。
五、現場調査・診断
居住者からの相談を受けてどのようなニーズがあるのかを把握したら、居住者のイメージが実現可能なのか、あるいは実現するためにどのような課題があるのかを調査・診断致します。調査は現場での調査が基本です。実際の現場で居住者とコミュニケーションを図る事で居住者自身がイメージの実現可能性についても把握出来るようになります。
六、資料調査
以下の資料を居住者から管理組合に照会して頂き、閲覧または借用して行う調査です。
1、管理規約・専有部分の修繕に関する使用細則・修繕届様式
マンションの管理規約や使用細則では、専有部分の修繕を行うための手続きやマンション独自の規定が定められています。通常は理事会の承認を受けてから工事に着工しますが、その場合着工の何日前までに届け出をしなければならないのかも確認します。
2、専有部分の修繕に関する規定・基準・推奨仕様
給湯能力や契約電気容量の上限、またフローリングの遮音等級などは規定されている数値を遵守して、使用する配管材料や給湯器の置き場などの規定も守る事が必要です。
3、竣工図・改修図
竣工図や改修図は必ずしも現状と一致しているとは限りません。現場調査で照合して相違点を修正した上で現状図を作成します。特に隠れた設備の範囲は点検口を開けて確認します。
4、修繕履歴
過去の修繕履歴から共用部分の工事内容を確認します。
5、長期修繕計画
長期修繕計画には今後の工事内容が示されています。専有部分のリフォーム工事が大規模修繕工事の時期と重なると、専有部分のリフォーム工事が規制を受ける事がありますので確認が必要です。また室内のパイプシャフトを壊して共用の排水管を更新するなど、専有部分の一部を解体復旧する工事が予定されている場合には、二度手間にならないようにスケジュールを調整する事も必要です。
6、分譲パンフレット
新築当時のマンションの状況を詳しく把握する事が出来ますので、概略プランの作成をする際の参考にさせて頂きます。
七、概略プラン
現地調査と資料調査に基づいて居住者のイメージを概略プランとして作成します。概略プランが完成しましたら、工事施工会社を選定して頂き設計および工事等を施工会社に委ねます。そして当初のプラン通りに施工されているのか、変更をする場合にはその変更が問題ないのか、また問題がなかったとしても変更通りに施工されているのか、居住者の立場に立って施工会社と打ち合わせをさせて頂きます。
八、最後に
マンションの居住者がリフォームを計画する際には、まずはイメージする事から始まりますが最終的には予算の範囲内で工事をする事が必要になります。そのためにはいったん工事が始まったら途中でやり直しをする事なく工事を終わらせる事が大切です。そうすると工事を始める前の「計画」が何よりも大切と言えます。そこで当事務所では、実際に工事を始める前に居住者様の意向を踏まえた現実的なプランを『概略プラン』としてご提供させて頂きます。これにより、施工会社に対しては概略プランを踏まえた見積書を依頼する事が出来ますし、また建築材料のグレード等も予算の範囲内に合わせて決定していく事が可能になります。リフォーム工事においてはなによりも計画が大切です。後々後悔しないようにまずはお気軽にご相談下さい。