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1、共用部分と共有物
マンションの「共用部分」は、民法上は「共有物」といわれるものです。そして共有物については民法249条以下に規定されています。そこで民法上の共有物でもある「共用部分」の管理について、民法と区分所有法を比較しながら解説してみたいと思います。 なお民法と区分所有法の関係ですが、一般法である民法に対して区分所有法は特別法という関係にあります。特別法は一般法に優先されて適用されます。従ってマンションのような区分所有建物においては、まずは区分所有法が適用され、区分所有法に規定されていない事については、一般法である民法が適用されることになります。
 
 
2、共用部分の管理
共用部分の管理にはⅠ保存行為、Ⅱ狭義の管理、Ⅲ軽微な変更、Ⅳ重大な変更、の4つがあります。
   
Ⅰ 保存行為
保存行為とは物の修理,弁済期限の到来した債務の弁済など,財産の現状を維持する行為です。保存行為については各共有者が単独で行う事ができます。民法では252条但書に規定されており、区分所有法においても民法の規定を確認するものとして18条但書において規定されています。なお区分所有法の、このような規定の事を確認規定と言います。さらに区分所有法においては、規約で別に定める事も出来るとしています(18条2項、30条1項)。例えば「保存行為は管理者を通じて行う」旨の定めを規約で設定する事が出来ます。 
 
Ⅱ 狭義の管理(利用・改良行為)
狭義の管理(利用。改良行為)とは物の賃貸,現金を銀行預金にするなど,物または権利の性質を変えない範囲で使用・収益をはかる行為です。民法では「管理行為」として、「利用行為は持分の過半数の賛成により行う事ができる」としています(252条本文)。
一方で区分所有法おいては「共用部分の管理」として、「利用行為は区分所有者および議決権の各過半数による集会の決議により行う事ができる」としています(18条本文、39条1項)。また保存行為同様に、規約で別に定める事もできます(18条2項、30条1項)。
以上のように、利用・改良行為については民法と区分所有法では規定が異なっており、この場合には特別法である区分所有法が優先して適用される事になります。そして区分所有法により規約を設定した場合には、規約により共用部分の管理を行う事になります。
 
Ⅲ 変更行為  
変更行為とは増改築や建替え、売却、抵当権の設定などの行為をいいます。民法では251条に規定されており、変更行為については「全員の同意」が必要となります。
一方で区分所有法では、変更行為については「軽微な変更」と「重大な変更」に分けて管理組合で決議するものとしています。以下「軽微な変更」と「重大な変更」に分けて解説します。
  
①「軽微な変更」 
共用部分の形状または効用の著しい変更を伴わない変更の事をいいます。例えば大規模修繕工事は「軽微な変更」に当たります。ちなみに「大規模修繕工事」とは「修繕積立金を充当して行う計画修繕工事のうち、効率的な工事実施のために複数の部位や工事項目をまとめて実施し、通常は10 年以上の周期で実施される工事」の事をいいます。 
そして軽微な変更行為については、「狭義の管理」と同じように「区分所有者および議決権の各過半数による集会の決議」により行う事ができます。(18条本文、39条1項)。さらに保存行為同様に、規約で別に定める事も出来ます(18条2項、30条1項)。  
 
②「重大な変更」 
共用部分の形状または効用の著しい変更を伴う変更の事をいい、区分所有法では17条に規定されています 。例えば、エレベーターの設置やピロティーを集会室に変更するなどは「重大な変更に当たります。 
重大な変更行為については、「区分所有者および議決権の各3/4以上の多数による集会の決議」が必要です。ただ区分所有者の定数については規約で過半数まで減らす事が出来ます。
例えば、区分所有者が100人いる管理組合において重大な変更行為を行なおうとする場合、原則は75人以上の賛成がないと重大な変更は出来ないが、規約を作成して過半数の賛成で足りるとすると51人以上の賛成で重大な変更行為を行う事が出来る事になります。
もっとも、議決権については3/4以上の賛成がないと重大な変更行為を行い得ないので、いずれにせよ管理組合が重大な変更行為を行う場合には、かなりハードルが高い事が分かります。
 
③制限 
以上、変更行為を「軽微な変更」と「重大な変更」に分けて解説して見ましたが、両者にはさらに区分所有法の制限があります。
即ち、変更行為を行う事で「専有部分の使用に特別の影響が及ぶ時は、その専有部分の所有者の承諾が必要」です(17条2項)。またこの規定は、民法上の利用・改良行為である「狭義の管理」についても準用されているので、「狭義の管理」を行う場合にも「専有部分の使用に特別の影響が及ぶ時は、その専有部分の所有者の承諾が必要」です(18条3項)。 
 
 
3、一部供用部分の管理  
「一部共用部分」とはその名の通り、共用部分のうち一部のマンション住民で共有する建物の一部分をいいます。例えば店舗併設のマンション(下駄ばきマンション)において、下層階の店舗部分のみの用途に供される出入口、階段、エスカレーター、空気調節設備等や、上層階の住宅部分のみの用途に供される玄関、エレベーター、階段等は、下層階の店舗部分の区分所有者のみ共有する「一部共用部分」です。 
区分所有法は、「一部共用部分の管理」について第16条において規定していますが、なかなか難解ですぐには理解できない方が多いと思います。そこで、以下場合分けをして解説したいと思います。 
 
Ⅰ 「一部共用部分」のうち、区分所有者全員の利害に関係する部分については、区分所有者全員で管理する(区分所有法第16条)。
 
Ⅱ 「一部共用部分」のうち、区分所有者全員の利害に関係しない部分であっても、区分所有者全員が規約を設定して「区分所有者全員で管理する」旨の規定を設けた場合には、やはり区分所有者全員で管理する(区分所有者第16条→区分所有法第30条第2項)。
ただしその「一部共用部分」を共用すべき区分所有者の1/4を超える者の反対や、区分所有者の議決権の1/4を超える反対がある場合には、「区分所有者全員で管理する」旨の「規約」を定める事はできない(区分所有法第31条第2項)。
 
Ⅲ 「一部共用部分」のうち区分所有者全員の利害に関係しない部分で、区分所有者全員で「区分所有者全員で管理する」旨の規定の規約を設けない場合には、一部共用部分を共用すべき区分所有者のみで管理する(区分所有法第16条)。この場合において一部共用部分の管理または使用に関する事項については、一部共用部分を共用すべき区分所有者が規約で定める事ができる(区分所有法30条2項)。
 
 
4、損害保険の締結
共用部分について火災保険等の損害保険を掛けるという行為は、共用部分の管理にあたる行為です。この事は規約の第5章「管理」のなかで損害保険について規定している事からも明らかです(第24条)。 なお損害保険とは、通常は「火災保険」と言われている保険の事ですが、火災保険とあわせて加入できる「地震保険」や、火災保険に付けることのできる賠償責任補償特約なども「共用部分」に掛ける損害保険に含まれています。 
共用部分の管理については前述したように「集会の普通決議」により決めていくのが原則ですが、規約で別の定めをすることが認められています(区分所有法第18条2項)。これを受けて規約第24条第1項では、損害保険について「区分所有者は、共用部分に関し、管理組合が火災保険、地震保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する」と規定しています。それではここでいう「管理組合」とは一体誰の事をいうのでしょうか? 
管理組合には役員が置かれており(規約第35条)、役員は理事と監事からなります。次に「理事は理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当」します(規約第40条第1項)。そして理事会においては、理事の半数以上が出席して、出席理事の過半数で議事を決する事としています(規約第53条)。また「共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務」は管理組合の業務とされている(規約第32条)。 
従ってここでいう「管理組合」とは、理事の半数以上が出席した理事会の事をいうものと解すべきです。だからこそ規約第24条第1項は、「区分所有者は、共用部分に関し、管理組合が火災保険、地震保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する」と規定したのです。
もっとも実際に損害保険の契約を締結する場合には、管理組合を代表しその業務を統括する理事長が保険契約者となります(規約第38条)。例えば保険契約者名は「○○管理組合 理事長 雪入憲生」とするのが一般的です。