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1、自治会とは
自治会(「町内会」とも呼ばれますが,ここでは「自治会」と呼びます。)とは、住民自治を行い住民間の親睦を深めるための団体です。住民は必ずしも自治会に所属しなければならないわけではなく自治会への加入・脱退は自動的に行われるわけではありません。そもそも作ること自体も強制されているわけではない『任意団体』です。また自治会は区分所有者ではなく住民で構成されていますから賃借人も構成員となる事ができます。
 
 
2、管理組合との関係
管理組合は、建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体です(区分所有法第3条)。管理組合は一言でいうと『強制加入団体』です。区分所有者は、区分所有権の取得と同時に管理組合の構成員となり、その喪失と同時に構成員からはずれます。組合への加入・脱退などの手続は必要なく、個々人の意思で脱退する事も出来ません。従って、管理組合と自治会とは目的も性格も全く異なる団体である事から、一見するとお互いに関係がないように見えます。
しかしながらひとたび災害が発生すると、道路の寸断や渋滞、通信手段の混乱などによって、自治体や防災関係機関の消火・救出・救助などの活動能力が著しく低下するため、効果的な防災活動を行うためには、各自がバラバラで出火の防止や初期消火また被災者の救出や避難誘導などの防災活動を行うよりも、地域ぐるみで団結して組織的に活動する事が大切です。そうする事が結果的にはより多くの命を守る事に繋がります。そして地域ぐるみで災害に取り組むために最も効果的な組織を考えたとき、地域の地縁団体ともいえる自治会が最も適しています。
このように管理組合と自治会は、確かに平常時には無関係であったとしても、非常時には地域の一員として共同して防災活動を行う場面においては決して無関係とはいえない関係にあります。そこで少なくとも『防災』については、管理組合は自治会と連携していく必要性があると言えます。 
 
 
3、コミュニティ条項
マンションも一つの共同体であり適切な維持・管理を行っていくためには、居住者のコミュニティは欠かせません。2004年1月に改正されたマンション標準管理規約でも、「地域コミュニティに配慮した居住者間のコミュニティ形成」が管理組合の業務として、いわゆる「コミュニティ条項」として規定されていました(マンション標準管理規約第27条10号、同第32条第15号、以下規約とする。)。理由としては
①居住者間のコミュニティ形成は、日常的トラブルの未然防止、大規模修繕工事等の円滑な実施などに役立つので、管理組合にとって必要な業務である事。
②管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費など、地域コミュニティにも配慮した管理組合活動にかかるお金は管理費から支出したとしても合理性を欠くとは言えない事
が挙げられます(旧マンション標準管理規約(単棟型)第27条関係コメント)。
しかし、このコミュニティ条項は2016年度のマンション標準管理規約において削除されました。それは『管理組合の業務として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」を掲げていたが、これはマンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提にしたものだったが、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈される懸念があり、とりわけ自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブルが生じている実態もあった。』事が原因です(現マンション標準管理規約(単棟型)第27条関係コメント)。 
例えば、慣習的に神社仏閣への寄付や様々な募金・寄付金などを行っている自治会においては、加入を拒否する区分所有者がいてもおかしくありません。従って管理組合が管理費と一緒に自治会費を強制的に徴収する事は、管理費が管理組合の通常の管理に要する費用である事からすれば認められないと言うべきです。そこで、管理組合には「管理費」について自治会と切り離して考えていく事が求められています。
 
 
4、結論
管理組合と自治会の関係で重要なことは、それぞれの違いを理解したうえで実情に応じ役割分担を明確にして協働することです。管理組合と自治会との関係は様々であり、既存の周辺の自治会に属し管理組合で一つの班を構成することもあります。また一つの管理組合で一つの自治会を構成しているところもあります。規模の小さい管理組合ではほとんどが前者のタイプです。団地のような比較的大きな管理組合は後者のタイプで、独自に自治会を組織しているところが多いようです。後者の場合には二つの団体を混同しないように特に注意する必要があります。
また、管理組合と自治会とでは上記の通りその目的を異にしており、しかも管理組合が強制的な団体であることを考えれば、本来任意で個々人の自由意思に基づくはずの自治会活動を強制することは、管理組合として厳に慎むべきです。
一方でマンションにおける自治会活動は、管理組合の中のコミュニティだけでなく、マンションを含むその周辺地域のコミュニティとも関係を持つ事になります。特に上記の防災については関係を持たざるを得ないのが現実です。ただマンションによってはマンション建設時の周辺住民との軋轢が原因で既存の自治会に加入することなく、またマンション独自でも自治会を組織していないところが多くあります。しかしマンションがその地域の中で真空地帯・離れ小島のようになることは決して望ましい事態ではありません。その地域の福祉、環境保全、街作り等日々の生活の空間を如何に良くしていくかという問題は、マンションとその地域の住民が共に考えて創り上げていく問題だからです。
従って管理組合には、組合員が自治会活動を通じてマンションの周辺の地域全体のコミュニティに参画出来るような仕組みを作っていく事が求められています。